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9.日本の職人の現状(ページ:2/2) |
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<前ページよりつづき>
ヨーロッパでは「医者・弁護士・木工職人」というくらい木工職人は大切にされ「うちのじいちゃんは木工職人だぞ」と子供が友達に自慢しているそうだ。その理由は、何世代にもわたって使われる家具や家をその手でひとつひとつ造り上げるということ。そしてもう一つ、森には神が住んでいて、その神の持ちものである木を分けてもらい家や家具、生活道具を造る。その為、大切にしなくてはいけないという気持ちからきているのではないか、と言う話を聞いた事がある。
さて、先日知り合いの木工店の社長と話をしていると、職人全員を手放してしまったとの事。これ以上かかえていると会社自体が傾いてしまう、現場を取った時だけ日雇いで職人を手配する、との事だ。やはりハウスメーカーの住宅(2×4プレハブ住宅)に一軒家の現場をもって行かれる為、工務店に来る在来工法(まず柱を立て屋根を上げる)で家を建てる物件がないそうである。最近少しづつ在来工法の家が見直され、人気が出てきていて、4〜5年我慢すれば物件があるような話だが、それまで会社を維持して行く事が出来ないのだ。他を聞いてみても同じような話をよく聞く。ますます職人が少なくなっていく。10年後には家を修理するのに5〜6ヶ月待ち、さらに価格は高くなるとの事だ。現にアメリカやイギリスではそのような理由で自分達で行う為、Do
it yorself. 日曜大工が盛んになったのだとか。日本でも、週末にお父さんが自宅を修理・リフォームするのが当り前になる日が近い将来やってくるのではないか。余暇もどんどん増える事だし。
僕達が思うハウスメーカーの職人というのは、”職人”というよりも”工員”というイメージが強い。それは、ある程度工場でパネルや箱の形にしたものを現場で組み立て、取り付けていくような所からくるのだろう。だから企画以外の事にはすぐには対応ができない。ましてや将来、修理やリフォームが出来るのかと不安に思う。
やはりハウスメーカーの家は、建て始めると途中からの変更はなかなかきかないと聞く。それに比べ在来工法の家は、確かに納期はかかるが、変更もきく。図面で見るのと建て上がって行くのではイメージがまるっきりが違う。それを一般の人が図面上だけで理解するのはとても難しい。少しづつ出来上がっていくのを見ながら、「ここをこうゆう風に」とか、「扉の位置を左へもう少しずらしたい」「ここに物入れを作りたい」というよに融通がきくのだ。家というものはとても高価で、長く住むものだからこそ、じっくり考え、イメージを高めて自分なりの住み易い家を建てるべきである。そのような事も当り前のように出来るのは、本当の職人がいるからではないだろうか?
古く昔からある日本の職人の文化、博物館や美術館に並ぶいわゆる芸術品・美術品に限らず、木や鉄、ガラスなどのなかでも実際に生活品として人々に使われ、愛されてきたものに携わる職人の文化を、もっともっと大切に考え、想い、理解してもらえることを願いたい。
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