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9.日本の職人の現状(ページ:1/2) |
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今回は職人の事について少し書いてみようと思う。と言っても、自分の知っている職人とは、大工や木工の職人の事である。
まず第一に職人に対する現在の待遇である。現在の日本人の多くの給料は月給制で、年2回のボーナス、週休2日、有給休暇があると思うが、職人の世界では未だに一日を1人工で計算する、日給月給である。従って休みが多ければ当然、給料も少なくなる。まして有給休暇などという話は聞いたことがない。早い話が、日雇人夫とかわらないのである。
職人の中でも、比較的若い人たち(子供が育ち盛りの人たち)は、休みなど無くてもいいから少しでも多く稼ぎたいと思う。しかし、年老いた職人は無理しない程度に働きたい。そのような職人を上手くまとめて、1つの仕事をやらせるというのは社長にとって大変な事だ。特に最近の仕事は低コスト、短納期など、仕事の波が大きい。その為、集中的に仕事をしなければならず、残業をしながらこなして利益を出していくのはとても難しくなってきている。その為か、数年前から老舗の木工所などが倒産したり、閉鎖している所が特に多くなっている。
第二に職人といってもピンからキリまである。例えば、石こうボード、フロス、ジュータン貼りの仕事では、やる気になれば3ヶ月ぐらいで一人前になると聞く。だが木工、大工職人は、まず初めに刃物の研ぎから始めて、一人前になるのに最低でも8〜10年はかかるそうだ。バブルの以前までは工務店にしても木工所にしても、多少の余裕があったのですぐに一人前として使えない見習いの職人を使っていてもなんともなかった。またその会社の今後の会社の将来の為にも、若い職人を育てていかなければならなかった。だが現在では、そのような余裕など全く無い。若い職人を育てなくてはいけないと思ってはいても、経営上はとても無理な状況だ。また、新しく職人になろうとしている人も、10年かけて大工になるのなら、3ヶ月で一人前の職人になれる別の職を選んでしまう。ましてはじめに言ったように、10年修行して大工になっても、特別にいい手間(収入)が得られるという保証は無いのである。
今新たに木工職人を目指している人は、木がとても好きで、木に携わる仕事をしたいという思いを持った人ぐらいではないか。今自分の周りにいる、木工職人を見回してみても、若くて40代、ほとんどが50代、60代の人達だ。あと10年もすると、木を使ってなんでも造ることができる本当の職人はほとんど引退して居なくなってしまうだろう。
その反面、設計士、インテリアデザイナー、コーディネーターは、毎年学校を卒業してどんどん社会に出てきている。そして彼らは、他の人とは違うもの、変わったものをデザインし、図面にしていく。
だが、いくら素晴らしい発想で設計、デザインしても、そのデザインを忠実にイメージ通りに形(建物・家具・器など)に出来る職人がいなければ、どうしようもないのでは?だとしたら、今からでも少しづつ本当の木工職人を育てていく事を真剣に考えて行かなければいけない筈だが、現状は単価を安く施工してくれる所であればどこでもよく、職人の事などはまるで考えていないようだ。若いデザイナーや設計士の人達と話をしてみても、やはり彼らも将来の職人さんに不安を感じているようだ。
【次ページへ続く】
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