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12.日本の家具と外国の家具 |
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<プロローグ>
■日本の家具<板の構造>
戦前まで、日本で「家具」といえば殆どが”無垢”だった。 無垢板をつかって家具を作っていた、と聞くとなんとも贅沢な感じがする。今では値段も高く、本来大量には作ることのできない”無垢”の家具から、「フラッシュ」という製法の家具へと移っていったのは戦後になってからのことだ。
この移り変わりは、戦後の日本の技術進歩により大量生産が可能になった事と、良材の有効利用を業界が考えた事などによる。なかでも「良材の有効利用」は、今後も考えていかなければならない大きな課題であるが、戦後の日本の家具は、ほとんどがこの「フラッシュ」という製法で作られてきた。
そこでまず、家具に使われる板の構造について少し説明をしたい。
まず、「木製家具」と呼ばれ、一見「木」に見えるものでも、本当に中まで「木」を用いたものは少ないという事をご存知だろうか。
実は大抵、芯になる材料の外側を木目の美しい木のシート、つまりツキ板でくるんで仕上げてあるものが多い。こういった”芯材にツキ板を貼ったもの”に対し、まるごと「木」であるものを”無垢”と呼ぶ。まるごと「木」であるものと、一見「木」に見えるが実は別のものとであれば、誰しも丸ごと「木」の無垢の方がいいと思うのはもっともだと思う。しかし、無垢はそのものが天然のものであるだけに反ったり割れたりする欠点がある。しかも木材は限られた資源である。
そこで考えられたのが「フラッシュ構造」をはじめとするいくつかの特殊な製法で、これらは無垢よりもはるかに木材を有効に使う事が出来る。
[参考:フラッシュ構造とは (「合板とは」より)]
日本が高度経済成長の時代、既製家具メーカーは「フラッシュ構造」の家具を大量に生産した。それは、価格、供給量の両面で消費者の購買の要求を満たすためでもあった。また都心では団地や建て売り住宅が多く建てられ、引っ越しや納品には、従来の無垢などの重い家具から、軽い家具を選ぶ傾向へと移り変わっていった。今では殆ど人気のなくなってしまった婚礼家具やベビーダンスが全盛期だった頃だ。
その頃の既製の家具は、ツキ板に関して言えば、表面(扉の表)だけに良材を使用し、バック板・側板・内貼り等には多少グレードの低いものを使用していた。グレードの高い部分だけを使うのではなく、中グレードを使う部分があり、低グレードですむ部分がある。つまり、天然木化粧合板は捨てる部分が無いくらい有効に利用されていた。まさに、「フラッシュ=木材の有効利用」という公式が成り立っていた。
しかし、最近では既製品の家具の人気が落ち込み、マンション住宅等も殆どが作り付けの家具を好むようになった。作り付けに必要なのは扉の部分のみ、つまり良材の部分のみを使用する、という事になる。勿論、作り付けであっても側板やバック板、棚板、ウラ板なども必要だが、それらの部分にはプリント合板・塩ビ合板・ポリ合板・シナ合板などを使用する。その為、天然木化粧合板のグレードの低いものは行き場を無くし、多くが無駄になってしまっている。
「木」は生き物である以上、良材だけを育てる事はできないし、良い部分だけを選んで伐採することもできない。また1本の木の中でも本当の最高級品といわれる部分は、その中の一部分である。世の中の需要が”良い部分の材”ばかりになってしまったら、残りの部分はどうなるのだろう。結局現在の状況は、当初の「フラッシュ=木材の有効利用」という目的から、かなりかけはなれてしまっている。今後は、本当の意味での木材の有効利用を考え、良材以外での商品のニーズと活用方法が大きな課題である。
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